私が母より娘を選んだ日④

母は警察で、私に暴行を受けたと訴えた。

私も警察へ行き、事情を説明した。


母は私を起訴して、慰謝料をもらい、借金を返済するつもりのようだった。

また、ストレートに、借金を私が完済するなら起訴しないとも言ってきた。


旦那と祖父と、弁護士さんに相談にも行った。が、どうしても私の方が不利だった。


私が先に手を出していたし、私がたくさん殴って蹴っていた。手を出した方が負けって、ありきたりな言葉だけど、本当だと思った。


私と旦那は、コツコツ貯めていたお金で滞納金を清算し、月々決まった額の返済をしていくことを選んだ。


祖父は自分が支払ってやりたかったと言った。母の借金を何度も肩代わりした祖父には、もうお金が無かった。


ごめんって何度も謝る私に、旦那はヘラヘラ笑って、


「ほらー!すぐカッとなるのは良くないって言ってたでしょ、めちゃくちゃいい勉強になったね」

「この金額であの母親と縁が切れるなら安いもんだよ」

「夫婦初めての試練だったね」


凄く優しかった。


このとき、私はようやく母を捨てた。母に向かっていた愛情や熱意を、旦那と娘に生涯注ぐと決めた。


私は母が大好きだった。でも、私がいつまでも母を求めて、母を優先していたら、娘が私になってしまう。


私のように、娘が暴言を吐かれる。

私のように、娘が殴られる。

私のように、娘が母の男に触られる。

私のように、娘が金をせびられる。


考えただけで母への殺意が湧き上がった。母から娘を守りたかった。


私は娘を選んだ。私が金と引き換えに、母を捨てた日。母より娘を選んだ日。